技とは、基本に基付く理論を実際に応用して生活に役立てる手段の事で有るが、空手の技は先人が長い年月を掛けて技の根本を作ってくれた。現代空手は時代の流れと共に色々な武道やスポーツと交わり、総合武道や総合格闘スポーツとしての発展を見て来た。その多くは、競技化されて色々な考え方の基に枝分かれし、スポーツとして規定の中で優劣を争う要素が濃くなってスポーツ空手として発展して来た。
聖士會館の空手は飽く迄も武道としての空手を選択して居る。武道としての空手は、生活に密着し存在しています。其処に生きて行く為の骨が有ります。例えば、実戦において強敵を倒す為には、「不意打ち」、「奇襲」、「闇討ち」、「武器(飛び道具も含む)」、「二人掛かり」等の戦法を用いても何ら非難される事は無いので有る。
空手の稽古は相手と対戦する事を前提として稽古をするが、10代、20代、30代、40代、50代、60代と齢を重ねて行く度に体力が低下して来ます。体力で対戦する事を前提として空手の稽古をする事が困難になって来る。稽古を続けて行くと、経験に因って体力に勝る骨を体得して来ます。それは、最小の運動量で相手と対戦する様になります。それが技で有り気力です。この技を後世に残して伝えて行くのが指導者の務めで有り、その技を如何に沢山持っているかと言う技量が指導者の能力で有る。
どんなに科学が進んでも、自然災害の前には為す術も無い程に無力です。人工的と言うものには必ず崩壊と言うものが付いて回ります。空気の様に風の様に自然に任せた動きは無駄が無く、飽く迄も自然です。その様に技とは自然の理に適ったもので有り、無理が有りません。技と言うものは、一切の我を捨てて、宇宙と調和し、自然の理と合気した所に完成をみるもので有る。正しい想いと思い、姿勢、呼吸、中心力、瞬発力、見計らい等が最高の条件で発揮され、均衡が取れた状態の技の中に最高の気を発します。
滑らかな動きで有る「竹の様に撓い、弾くと言う様な動き」は、しっかり身に付いた基本の基に中心が正されているが故に出来る自然な動きです。「流水の如く・・・・・・」見えはするが掴む事は出来無い。其れは、自然と調和し一体と成った故の自己和合で有る。自然の理に適った技が身に付いて来ると、ものの見方、考え方が変わって来ます。逆境を順境に転換して事を行えるのも自然の理です。
武道として技を追求すると、人格的にも形成されて行き、全てに於いて角が立た無くなり、丸くなり、極めると球になります。ですから、倒れる事が無く安定した姿をし、裏が無くなります。技とは無形の存在で有るが、態度として現れます。技の向上には、心の浄化が大きな要素で有り、中心的な存在で有る。
武道としての空手の技は、派手さは無いが、突きは突き抜ける様な突きを出す。又、直突きが多い。全身の力を拳に集中させ易いからと言う事と直線の突きは速度が速いからだ。鍵突きにしても肩を入れて直線的な動きをするのは力の伝達が大きい。突きは、仙腸関節と足の母指と、手の握りや形が大切です。回し蹴りは死角から入る蹴りを行うが、膝と足が螺旋を描き、溜をしっかり作るのが特徴です。膝を鋭角にすると相手からは視野に映る面積が小さい為に動きを見過ごし易い。膝の動きを基に膝から下は速度と破壊力が加速する。何れにしても両膝の動きが大切で有る。何れにしても、どの部位を武器にするか、其の武器を如何に有効にするかは正しい基本を体得し、更に研究して行かなければ成らない。
聖士會館空手術は、中心軸と中心力に重きを置きます。全てに於いて、足の母指を中心に膝を安定させ、流れの方向性を見極め、捌き崩しを行います。離れた間合いと接近間合いとでは当然攻撃方法が違います。速度は先の先の動きで加速し、螺旋の流れへの捌き崩しと攻撃は言霊を発して加速します。
全ての運動は螺旋を描いて居ます。組み手の攻防には、
1.止まって居る時に螺旋力を持って直力攻撃を仕掛けて制す。
2.螺旋の攻撃力を螺旋運動の中で揺らがせて中心軸を崩し、反撃に出る。
3.相手の攻撃力に対して螺旋の攻撃力を螺旋の引き込みに取り込んで捌き崩し極めを行う。
4.相手の攻撃力を無力化して螺旋運動に巻き込んで崩す。
5.相手に体術を掛けて術に掛ける。
が有りますが、相手に対して螺旋運動の中に巻き込み、心を揺らがし、肉体を揺らがし、中心軸を崩すと相手の攻撃力も防衛力も低下します。相手を崩す時は無力化する事が大切です。そして、攻撃をする時には足の向きが大切です。前足は相手に向かって、後ろ足は相手に60度の向きにすると最大の直力が生まれます。運足を行う時も此の方向を極力維持します。離れた距離では突き蹴りを出し、相手の攻撃を捌き、受けたと同時に崩し極めるのが理想です。
崩しは基本的に相手を膝から崩します。然し、螺旋運動の中では肘を崩しても膝が崩れます。肘が開いて居る相手(乳製品を含む動物性蛋白質の摂取が多い人)は崩し易いと言う事に成ります。身体が柔らかい人は崩し難いので、中心軸を正して綺麗に螺旋運動を描き相手を崩す。
勢いの付いた相手には、其の力を利用すると弾かれる力が大きいので、相手の腕を急激に地面に向かって落とすと、其の螺旋運動を放物線に大きく弧を描いて飛びます。
自分に暗示を掛けると、動きを加速したり、鉄の身体に成ったりします。相手に体術を掛けると自分の描いた攻防の動きに近く成りますから相手の攻撃が見えて来ます。
どんな達人でも基本がしっかりして居る。技は基本の応用に過ぎ無い。生涯に於いて基本の研究を怠らない事が大事。技に心が籠もる(技の中に心が有る)究極の武道を目指して!
しっかり身に付けた基本の上に成り立つ技は、齢を重ね力が枯れても技は枯れ無い。