武道に於ける「正義」とは耐え忍ぶ事で有り、戦いを未然に防ぐ事で有る。日常の心得として、心の中に有る敵意、闘争心、相手を侮る心を無くし、純粋な心を持ち精神的に安定する事で有る。「空手に先手無し」と言うのは、此の様に正義心を持つ事で有るが、いざ戦いを避けられ無い場合は、精神的な安定と其の場の状況を把握した上での、完成された態度、間合い、時の見計らい、構え(姿勢)が出来、体術、想念術迄掛けられれば戦いの前に相手に精神的に勝つ事が出来る。そして、其の充実した心構えの事を「空手に先手有り」と言い、極意は戦わずして勝つ事で有る。
戦いを未然に防ぐ事が武道家の最も大切な心得で有るが、空手が武術で有る以上、相手と戦いを交える事を前提として稽古をする。戦わなければ成ら無い時に大切な事は、とっさに相手の律動を読み取り、相手の律動を乱す技を掛ける事で有る。
真剣勝負で狙うのは「心の隙」で有る。心の隙とは、心が一つの事に囚われた時で有る。其の時は攻撃されても反撃出来無い。攻撃しようとした時、攻撃を受けられた時、構えを変えた時、何かの意図を持って攻撃しようとする時等は一瞬では有るが事に囚われて居るので隙が出来る。其の瞬間に攻撃すれば反撃出来無い。
心を集中して、相手の心の隙を待ち構え、其の心が動いた瞬間に攻撃をする。其の隙を捉える技術が「心技」なのです。そして、其の境地を「無念無想」と言う。
攻撃は最大の防御と言うが、空手では心と技が身に付くと、戦いの流れを自分の円の動きの中に巻き込んで、隙を突き、捌く、崩すという様に流れを止めずに相手の力の方向を変えて無力化させます。
心と身体には生体律動と言う同調する律動が有ります。正しい食生活を送ると此が安定します。空手を修行して行く内に、間合い、速度、呼吸、足捌き等の律動を生体律動と同調させて行く。此が上達への近道で有る。
基本を完璧に修め、組み手を通じて相手を知り、思い遣りを持ち、空手は必殺の武術で有る事を自覚して行く。そして、妄りに空手の技を使う事を慎まねば成らない。
自分に厳しい稽古を行う者程、誰にも信頼され立派な武人に育って行く。そう言う者程平和を愛する。